夜歩
信号が替わる
誰も渡らず
白線の光る
雨の跡在る
自販機の唸る
影が二本出る
缶の落ち音
それだけが鳴る
歩きの続く
理由の無くて
足だけが知る
次の角まで
夜の底にて
靴音だけ在る
風の無い道
歩きだけ在る
高架が鳴れる
遠くを過ぎる
振動の来れる
足裏で聴く
水溜りの在る
避けずに踏む
跳ねの上がれる
靴が濡れ出す
次も同じ道
同じ電柱に
同じ猫が居る
目だけが光る
夜の底にて
靴音だけ在る
風の無い道
歩きだけ在る
コンビニの光
硝子の向こう
雑誌の並ぶ
入らずに過ぎ
タクシーが停む
乗らずに過ぎる
自転車が来る
すれ違いの風
何処に向かうか
聞かれの来ない
答えの要らず
歩きが答え
夜の底にて
靴音だけ在る
風の無い道
歩きだけ在る
橋の上に出る
川が光れる
街灯の映る
水面の揺れる
欄干の冷え
手が触れて知る
遠くの電車
音の遅れ来る
煙草の匂う
姿の見えず
何処かの窓に
灯りが一つ
誰かが居れる
誰かは知らず
此方も知らず
それで良い夜
夜の底にて
靴音だけ在る
風の無い道
まだ歩いている
洗濯
扉の重い
光の白い
椅子の硬くて
座りの浅い
機械の並ぶ
一つが廻る
窓の曇れる
湯気の籠もれる
廻りの見える
中が見え出す
色の混ざれる
水に沈める
廻りの中に
服が沈める
待ちだけが在る
音の止まれず
雑誌の古い
頁の反れる
読みの入らず
膝に載せ出す
管の鳴り出す
虫の寄り在る
影の揺れ出す
時計が遠い
流しの替わる
音の変われる
濯ぎに入る
泡の消え出す
硝子の向こう
車の過ぎる
人の通れる
此方は見ない
灯りの一つ
缶を買い出す
温みの在れる
手で包み出す
缶の冷め出す
手だけが温い
飲みの尽きれる
捨て場を探す
音の上がれる
回りの速む
水の飛び出す
壁に張り付く
唸りの増せる
椅子に伝わる
急に止まれる
静けさが来る
蓋の開き出す
湯気の立ち出す
湿りの在れる
温みの出れる
袋に詰める
重さの変わる
外へ出て行く
夜が冷たい
廻りの中に
服が沈める
待ちだけが在る
まだ廻り在る
雨窓
硝子に筋出る
一本が先に
次が追い出す
合流の出来る
太い筋に成る
下へ急ぎ出す
桟で途切れる
また新しい筋
外の音変わる
粒の大きさ
屋根の音変わる
道の音変わる
硝子の向こう
動きの止まず
此方は動かず
座りのまま居る
曇りの出来る
息で広がる
指で触れ出す
線の引き出す
線が消え出す
曇りが戻る
拭いの掛からず
任せのまま居る
遠くの灯りが
滲んで丸い
色だけが来る
形の溶けて
硝子の向こう
動きの止まず
此方は動かず
筋だけが行く
傘が一つ行く
赤い傘在る
角を曲がれる
見えの消え出す
次が来ぬまま
道が空き出す
水だけが行く
人の居ない道
茶の冷め出せる
湯気の途切れる
手の中だけに
温みの残る
硝子の向こう
動きの止まず
此方は動かず
座りのまま居る
雨脚の変わる
細さに成れる
音の細れる
間の広がれる
空の明るむ
端から止み出す
雫の残る
最後の一滴
止んだ後の道
濡れの光れる
空を逆に置く
水音だけ在る
鳥が一羽鳴く
雨後の声在る
風の出て来る
乾きの始む
硝子の向こう
動きの止まる
此方も動かず
座りのまま居る
煙草
箱の開き出す
一本を抜く
口に咥える
火の灯り出す
先が赤まる
煙の立てる
一口を吸う
肺に溜まれる
吐きの漏れ出す
白く広がる
風に千切れる
形の解ける
一本の中
壁に凭れる
煙だけ在る
短くなれる
灰の伸び出す
落ちずに在れる
指で弾ける
散りの掛かれる
地面に落ちる
赤が消え出す
灰の冷え出す
色の失せれる
向かいの窓に
灯りが一つ
影の動ける
此方は見ない
一本の中
壁に凭れる
煙だけ在る
短くなれる
深く吸い出す
深さの増せる
吐きの遅れる
鼻から抜ける
匂いの付ける
指に残れる
服に移れる
髪に籠もれる
夜が静かに
息だけ白い
寒さの在れど
壁がぬくまる
一本の中
壁に凭れる
煙だけ在る
短くなれる
紙の焼け出す
先がフィルター
吸いの浅まる
味の変われる
熱さの近い
唇の際
最後を吸える
指が焼け出す
地面に落とす
靴で踏み出す
火の途切れ出す
煙の残る
手の匂い嗅ぐ
指が黄色い
箱を仕舞える
壁を離れる
一本の中
壁に凭れる
煙だけ在る
煙の散れる
屋上
扉の重い
押して開き出す
風の当たれる
広さの変わる
空が開けれる
柵まで歩く
街の灯が在る
音の届かず
風だけが来る
髪の乱れる
裾の膨らむ
寒さの来れる
屋上の端
街が光れる
此処には来ない
風だけが在る
柵に凭れる
指の冷え出す
鉄の匂える
下を見おろす
灯りの動く
人の見えない
声の届かず
距離だけが在る
床に座れる
壁に背を付け
空が真上に
星が見え出す
屋上の端
街が光れる
此処には来ない
風だけが在る
赤い灯が行く
音の遅れる
飛行機の筋
星に紛れる
雲の掛かれる
月の隠れる
また出て来れる
急ぎの無くて
風の止まれる
音の消え切る
街の遠退く
此処だけが在る
屋上の端
街が光れる
此処には来ない
風だけが在る
座りの長い
足の痺れる
立ちの掛かれる
膝の鳴り出す
柵に手を掛け
もう一度見る
街の変わらず
此処も変わらず
扉を閉じる
段を降り出す
足音の出る
壁に囲まれ
風の途切れる
暖かさ来る
外へ出ていく
空の狭まる
屋上の端
街が光れる
此処には来ない
まだ風が在る
階段
段の冷え在る
段に掛け在る
手摺の錆びる
灯の届き在る
壁に挟まれ
声の漏れ来る
足の上がれる
静かに戻る
膝を寄せ在る
影の折れ在る
段の間に在る
上へも行かず
冷えだけが在る
座りの続く
匂いの降りる
飯の炊き在る
窓の黄色い
見上げの狭い
灯の一つ消え
声の止み在る
静けさの増す
冷えの深まる
手摺に触れる
冷えの伝わる
鍵を探せる
鍵の重たい
鍵の差し込む
鍵の廻れる
段の間に在る
上へも行かず
冷えだけが在る
扉の閉じる
公園
門の開き在る
砂利を踏み行く
灯の間が遠い
木の黒く在る
ベンチの湿る
手で拭い出す
腰を下ろせる
冷えの来て在る
葉の擦れて在る
遠くに車
暗さの深い
砂利の冷え在る
座りだけ在る
動かずに在る
草の匂える
土の湿れる
露の降り在る
地の柔らかい
上を向き在る
星の少ない
雲の流れる
明るみの無い
鳴りの薄まる
闇の濃く在る
腰を上げ出す
膝の鳴り在る
砂利へ踏み出す
灯へ歩き出す
暗さの深い
砂利の冷え在る
座りだけ在る
暗さの戻る
高架
場所:高架下 体:歩く・立ち止まる 動作:聴く・見る 時間帯:深夜
柱の太い
上を過ぎ行く
揺れの降り来る
地の震え在る
水の垂れ出す
跡の広がる
壁に染み在る
苔の匂える
歩きの響く
壁に返れる
上を流れる
下に立ち在る
音の降り来る
揺れだけが在る
灯りの遠い
影の二重に
地面の暗い
猫の過ぎ行く
風の抜け出す
首を竦める
手の仕舞い行く
上が途切れる
音の止み在る
空の開き出す
立ち止まり在る
振り向き見れる
暗さが長い
出口に光る
上を流れる
下に立ち在る
音の降り来る
音の遠退く
終電
ドアの閉まれる
席の空き出す
揺れの始まる
吊り革の揺れ
誰も掴まず
窓に映れる
灯りの過ぎる
数えの出来ず
継ぎ目を越える
同じ間で来る
揺れに任せる
目の閉じかける
終電の中
灯りが遠い
揺れだけが在る
眠りの手前
隣が眠る
肩の落ち出す
寄りの掛かれる
起こしの出来ず
重さの掛かる
温みの移る
知らない人の
寝息が近い
駅が飛び出す
名の読み取れず
過ぎてから知る
戻りの利かず
終電の中
灯りが遠い
揺れだけが在る
眠りの手前
窓が暗まる
映りの消える
闇だけが在る
外が見えない
音の変われる
壁が近づく
反響の出る
抜けの来ぬまま
光の差せる
目の細まれる
外に戻れる
灯りが増える
終電の中
灯りが遠い
揺れだけが在る
眠りの手前
速度の落ちる
駅が近づく
人の立ち出す
鞄を探す
隣が起きる
肩の軽まる
温みの引ける
席の冷え出す
ドアの開き出す
冷えの差し込む
ホームに立てる
電車の去れる
音の遠退く
風の止まれる
改札を出る
夜の広がる
終電の中
灯りが遠い
揺れだけが在る
まだ揺れている
川辺
川の音来る
道の曲がれる
柵の沿い出す
草の匂える
土手の下れる
足場の変わる
石を踏み出す
水が近づく
流れの見える
光の載れる
揺れて割れ出す
止まりの出ない
流れの傍に
座りの出来る
音だけが在る
水の止まれず
石に座れる
尻から冷える
顎を載せ出す
向こうが光る
面に映れる
揺れて崩れる
また繋がれる
見ていて飽きず
手を浸し出す
冷えの伝わる
指の先から
手を引き戻す
流れの傍に
座りの出来る
音だけが在る
水の止まれず
橋が見え出す
影の広がる
下を潜れる
音の篭もれる
響きの変わる
暗さの増せる
水だけ光る
此処は静かに
橋の下にて
風の入れない
音の廻れる
此処で止まれる
流れの傍に
座りの出来る
音だけが在る
水の止まれず
仰向けに寝る
石が背に在る
硬さの在れる
鉄が見え出す
水の聞こえる
星の見えない
流れの続く
目が慣れて行く
起きの掛かれる
背に石の跡
払いの掛かる
土の付き在る
橋を出ていく
空の広がる
白みの出れる
水の光れる
流れの傍に
座りの出来る
音だけが在る
夜の明け出す
浅眠
本が傾く
指の緩める
頁の閉じる
重さで閉じる
文字の滲める
行の揺れ出す
読みの追えない
意味が遠退く
音の遠くなる
壁の向こうへ
機械の唸り
時計の針が
沈みの掛かる
境の溶ける
落ちの掛かれる
まだ落ちきれず
瞼の落ちる
光の減れる
赤の透けれる
膜越しの赤
首の落ちかけ
戻りの掛かる
また落ちかける
戻りが弱い
足の先から
重さの抜ける
指の在り場が
分からなくなる
沈みの掛かる
境の溶ける
落ちの掛かれる
まだ落ちきれず
音が形持つ
色が音持つ
混ざりの出れる
境の緩む
誰かの声が
遠くで掛かる
返しの出来ず
聞こえだけ在る
夢の端が来る
像の湧き出す
見ようとすれば
像の逃げ出す
沈みの掛かる
境の溶ける
落ちの掛かれる
まだ落ちきれず
本が落ちれる
音の鳴り出す
体の跳ねる
目の開き出す
何処に居たのか
いくつ経ったか
天井の在れる
此処に戻れる
同じ頁に
栞の在れる
進みの無くて
本を閉じ出す
灯りの消せる
暗さの来れる
布団に沈む
今度は深い
沈みの掛かる
境の溶ける
落ちの掛かれる
今度は落ちる
湯
蛇口を捻る
湯の落ち始む
底を叩ける
湯気の立ち出す
水面の上がる
音の変われる
鏡の曇る
壁に水滴
蛇口を止める
音の消え在る
湯に沈み在る
水面の揺れる
境の消える
温みだけ在る
耳を沈める
音の遠退く
脈の聴こえる
みずなかにある
皺の寄り在る
湯の冷め始む
湯の薄まれる
体の重い
水面の止まる
湯気の細れる
栓を抜き出す
渦の巻き出す
水面の下がる
肌の晒され
湯に沈み在る
水面の揺れる
境の消える
水の引き在る
踏切
音の鳴り出す
棒の下り出す
赤のつき出す
赤が交互に
足の止まれる
前に行けない
向こうが在れど
此処で待ち出す
線路の光る
左を見れる
まだ来ていない
音だけが先に
遮りの前
立ちで待ち出す
鳴りが続ける
来るまで在れる
風の変われる
鉄の匂える
地面の揺れる
足底で聴く
光の見える
一つが太る
音が追い付く
空気が押され
窓の並べる
顔の見えない
速さの中に
灯りだけ過ぎ
遮りの前
立ちで待ち出す
鳴りが続ける
来るまで在れる
一つが過ぎる
次が来ぬまま
揺れの残れる
鳴りの続ける
向こうが見える
人の待ち在る
同じ側にて
此方を見ない
もう一本来る
音の戻れる
地面の揺れる
また足が止む
遮りの前
立ちで待ち出す
鳴りが続ける
来るまで在れる
最後の窓が
赤い灯を引く
音の遠退く
揺れの細れる
鳴りの間伸びる
棒の上がれる
赤が消え出す
道が繋がる
足の踏み出す
線路を跨ぐ
溝の在り出す
靴底で踏む
向こうに着ける
振り返らない
鳴りの消え出す
夜に戻れる
遮りの前
立ちで待ち出す
鳴りが続ける
まだ鳴っている
自販
唸りの止まぬ
白に照らされ
熱の吐き出す
影の伸び在る
硬貨の落ちる
底を転がる
ボタンの灯る
指で押し込む
缶の降り来る
底に落ち着く
光の隅に
唸りの中に
缶の冷え在る
唸りと二つ
屈んで触れる
冷えの手に来る
水滴の付く
手の中に在る
爪に起こされ
小さく抜ける
口に当て在る
喉を落ち行く
唸りへ戻る
温みの移る
背を預け在る
背に伝い来る
中の空き出す
膝の冷え行く
光の隅に
唸りの中に
缶の冷え在る
唸りの消えぬ
