FULL ALBUM
十三曲入り ・ ふたつの声で
ふたつの声の記録です。片方は電球色の光の中で、片方はモノトーンの部屋で、それぞれの夜を歌っている。
十三曲、声は交互に。ページの色が変わったら、歌い手が替わった合図です。
I 兆し◉TRACK 01
今日の現場で
いい光が撮れた
フィラメントの
少し赤みがかった3000K
いつもなら
自分だけで見る
でも今日は
なんとなく送った
なんとなく
という言い方を
自分でも
信じていない
既読がついた
それだけで
部屋の温度が
少し変わった気がした
可愛いと打ってきた
光の話じゃない
たぶん
そういうことだ
返信が来るまでの
時間が好きだ
長くても短くても
どちらでもいい
でも短いと
少し嬉しい
それくらいは
認めてもいい
認めると
次も送りたくなる
それでいいのか
まだわからない
既読がついた
それだけで
部屋の温度が
少し変わった気がした
可愛いと打ってきた
光の話じゃない
たぶん
そういうことだ
友達には
送らない種類の写真だ
自分でも
気づいている
いつから
こういうことを
するようになったのか
覚えていない
また撮れたら
送ろう
たぶん
送ってしまう
soft female vocal, japanese city pop, intimate indie pop, mellow groove, BPM 92, key G major, warm electric piano, subtle bass groove, light drums with rimshot, clean guitar accents, minimal arrangement, emotional but restrained singing, warm analog atmosphere, night apartment mood, cinematic but intimate, nostalgic warm lamp light feeling
I 兆し◆TRACK 02
会話の中で
さらっと出てきた店名
聞き流したふりを
したけど覚えた
その夜
少しだけ調べた
少しのつもりが
三十分経っていた
口コミを
全部読んだ
全部読む必要は
なかったのに
詳しくなってしまった
行ったこともないのに
どの席がいいかまで
わかってしまった
これを知っていることを
悟られてはいけない
さりげなく
提案しなければ
さりげなく提案したら
「よく知ってるね」
と言われた
知ってるわけじゃないと答えた
嘘をついた
でも全部本当のことを
言う必要も
ない
準備することが
好きなだけだ
誰に対しても
そうしている
詳しくなってしまった
行ったこともないのに
どの席がいいかまで
わかってしまった
これを知っていることを
悟られてはいけない
さりげなく
提案しなければ
後輩に
「最近楽しそうですね」
と言われた
そうかもしれない
否定しなかった
初めて
否定しなかった
それだけのことだ
次の会話で
また何か出てくるといい
また調べよう
三十分くらい
Japanese city pop, female vocal, BPM 112, D major, light groove, warm electric piano, soft bass, subtle guitar, playful and intelligent mood, late night curiosity feeling, slightly upbeat but intimate
I 兆し◉TRACK 03
いつもの豆を
切らしてしまった
買いに行ったら
棚の前で止まった
この前あの人が
話していた産地が
たしか
この辺だった
詳しくないのに
手が伸びた
買ってみようと
思ってしまった
淹れてみたら
悪くなかった
そういうことか
と思った
報告しようとして
やめた
なんで報告するんだと
思ったから
飲みながら
何を考えてたんだろう
コーヒーの話を
あんなに楽しそうにしてたな
ただそれだけを
思い出していた
朝から
ぼうっとしてしまった
仕事が
はかどらなかった
コーヒーのせいじゃない
たぶん
淹れてみたら
悪くなかった
そういうことか
と思った
報告しようとして
やめた
なんで報告するんだと
思ったから
友達に話したら
絶対に笑われる
笑われる理由が
自分でもわかるから
言わない
でも
また同じ豆を
買うと思う
次会ったとき
言おうか
やっぱり
言わなくていいか
Soft indie city pop, BPM 92, key G major. Warm morning atmosphere, calm and reflective mood. Female vocal, conversational singing style, intimate and natural. Clean electric guitar, warm electric piano, soft bass, light brushed drums. Song about quietly remembering someone while drinking coffee in the morning. Gentle, slightly nostalgic feeling, understated arrangement.
I 兆し◆TRACK 04
土曜の午前中は
必ず仕事をする
ずっとそうしてきた
ずっとそれが正しかった
今日も開いた
ノートパソコンを
でも
全然進まない
進まない理由が
わかっている
認めたくないが
わかっている
昨日の会話を
また思い出している
面白い返し方だった
また思い出している
非効率だと
わかっている
わかっている人間が
三回思い出している
集中するために
コーヒーを淹れた
飲みながら
また思い出した
コーヒーのせいだと
思うことにした
コーヒーのせいじゃないと
自分でわかっているが
後輩に
進捗どう?と
聞かれたときの
顔を考えている
昨日の会話を
また思い出している
面白い返し方だった
また思い出している
非効率だと
わかっている
わかっている人間が
三回思い出している
今まで
土曜の午前に
仕事以外のことを
考えたことがなかった
初めてだ
と思った
悪くない
と思った
仕事は
午後からにしよう
人生で初めて
そう決めた
Indie pop, light groove, BPM114, F major female vocal, conversational singing slightly ironic tone clean electric guitar, soft bass, minimal drums Saturday morning atmosphere
II 日々◉TRACK 05
帰りに雨が降った
予報は見ていた
でも傘を
持ってこなかった
駅の出口で
少し待っていたら
LINEが来た
今どこと
駅と答えた
雨と答えた
傘ないと
なんとなく付け足した
なんとなく
付け足した
なんとなくじゃないと
自分でわかってる
待っていたら
来た
傘を持って
来た
濡れてるじゃないかと
言われた
少しだけ
と答えた
半分入っていいよと
言われた
狭かった
それでよかった
歩きながら
何も話さなかった
それでいいと
思っていた
なんとなく
付け足した
なんとなくじゃないと
自分でわかってる
待っていたら
来た
傘を持って
来た
家に着いて
おやすみと言われた
おやすみと
返した
部屋に入ってから
少し経って
ともだちに
LINEを送った
今日いいことあったと
だけ送った
内容は
聞かれても言わない
明日も
雨らしい
傘は
持っていこうと思う
Japanese indie pop, BPM 98, key D major. Soft female vocal, intimate conversational singing. Clean electric guitar, warm electric piano, gentle bass, light brushed drums. Rainy evening atmosphere, reflective and tender mood. Song about texting someone in the rain and sharing an umbrella. Minimal arrangement, emotional but understated.
II 日々◆TRACK 06
いつもは
全部決めてきた
行き先も
答えも
今日だけは
違う人に
委ねてみた
初めて
知らなくていい
俺が連れてくから
そういう言葉を
使う人だった
耳が熱い
わかってる
顔には出ていない
たぶん
箸を持ったまま
止まっていた
連れていかれる側に
なったことがなかった
行くかどうかは
私が決める
ちゃんと言えた
声も安定してた
でも耳は
知っている
私より先に
答えを出していた
こういうことか
と思った
こういうことが
あるんだ
耳が熱い
まだ熱い
冷ます方法を
知らない
自分で歩く人間だ
ずっとそうだった
それでも
連れていってほしかった
怒っても
勝っても
泣いても
耳は赤くならなかった
この人だけだ
管理できないのが
この人の前だけ
耳が先に動く
次の日付を
まだ教えてもらっていない
教えてもらわなくても
空けておこうと思っている
Japanese city pop / modern neo city pop, female vocal, intimate and emotional but restrained. BPM 88, key C# minor. Theme: a strong independent woman experiencing a rare moment where someone else leads her, and her body reacts before her mind. Subtle romantic tension. The feeling of losing control in a quiet way. Atmosphere: late night restaurant, soft lighting, close emotional distance. Minimalist arrangement that lets the lyrics breathe. Instrumentation: warm electric piano (Rhodes), soft analog synth pads, clean electric guitar with light chorus, round electric bass, tight but gentle drums. Mood: introspective, delicate, slightly vulnerable but composed. Not dramatic, more like a quiet realization. Vocal style: natural Japanese female voice, intimate, slightly breathy, controlled emotion, conversational phrasing. Style references: Japanese neo city pop, calm urban night mood, subtle groove.
II 日々◉TRACK 07
いつもの現場で
いつもの照明を
調整していたら
手が止まった
少し暖かくした
理由はわからない
でも
これがいいと思った
去年の自分なら
選ばなかった色だ
何かが
変わっている
気づいていなかった
変わっていたことに
あの人の部屋の光が
ここにいる
嬉しいのか
困っているのか
どちらでもあって
どちらでもない
現場監督に
いいねと言われた
いつもより
柔らかいと言われた
そうですかと答えた
理由は言わなかった
言える理由が
自分でもわからないから
わからないまま
選んだ色が
正解だったなら
それでいい
気づいていなかった
変わっていたことに
あの人の部屋の光が
ここにいる
嬉しいのか
困っているのか
どちらでもあって
どちらでもない
仕事と
あの人は
別のところに
あるはずだった
でも3000Kが
同じ場所に
なってしまった
いつの間にか
また選ぶと思う
この色を
理由がわからなくても
また選ぶと思う
Japanese indie city pop, BPM 92, key G major. Female vocal, soft and introspective. Clean electric guitar, warm electric piano, gentle bass, light brushed drums. Atmosphere of quiet reflection and subtle emotional change. Song about a lighting technician noticing their work becoming warmer because of someone they met. Minimal arrangement, intimate mood.
II 日々◆TRACK 08
コーヒーを
飲みすぎている
白湯にしたほうがいい
医学的に
鉄瓶を
調べた
三十分
レビューを全部読んだ
ついでに
買っておいた
誰かに言われたら
そう答える
ついでに
買う鉄瓶は
ない
わかってる
でも
レジに持っていった
ついでに
持っていった
頸椎に
負担がかかる姿勢で
いつも
仕事をしている
テンピュールが
いいと聞いた
調べた
一番いいやつにした
変だと
思った
鉄瓶と枕を
持っていく女
ついでに
持っていく枕は
ない
わかってる
でも
玄関に置いてきた
ついでに
置いてきた
渡し方を
三回考えた
さりげなく置く
黙って渡す
一言添える
一言添えることにした
「コーヒー飲みすぎだから」
それだけ言った
それだけでよかった
それ以上は言わなかった
使ってくれている
らしい
毎朝
白湯を飲んでいるらしい
それだけで
よかった
ついでに
よかった
Japanese indie pop, female vocal, BPM 88, C# minor, warm electric piano, soft bass, light rimshot drums, slightly dry vocal, self-aware tone, understated delivery, minimal arrangement, department store afternoon lighting, shopping bag in hand feeling, quiet apartment hallway atmosphere, restrained but warm analog texture
II 日々◆TRACK 09
デニムの裾が
濡れた
よけられなかった
四月の波に
両手で裾を
持ち上げた
膝下が
ずぶ濡れだった
隣を見たら
同じだった
顔を見合わせた
それだけだった
笑い出した
止まらなかった
こんな笑い方を
知らなかった
腹から出てくる
うるさい声
波打ち際で
風に髪を乱されながら
最悪だと
思った
最悪だと
声に出した
最悪だねと
返ってきた
それで
もっと笑った
管理できなかった
この声を
こんなに
簡単に
笑い出した
止まらなかった
こんな笑い方を
知らなかった
自分の中に
いたんだ
こういう人間が
ずっといたんだ
スニーカーを
脱いだのは私だ
砂浜に
入ったのも私だ
冷たいと
わかっていた
わかっていて
入った
笑い声が
風に持っていかれた
残ったのは
濡れたデニムだけ
Japanese city pop, BPM 106, key C# minor. Bright and stylish groove with subtle emotional nuance. Female vocal, light and conversational tone. Clean electric guitar, bright electric piano, groovy bass, tight drums. Urban night atmosphere with a hint of vulnerability. Elegant but slightly fragile mood.
III 返事◉TRACK 10
帰る時間だと
わかっていた
わかっていたのに
立ち上がれなかった
もう少しだけと
思った
声にしなかった
声にする人じゃないから
帰り際に
また来てもいいかと
聞こうとした
聞けなかった
聞けなかったことは
いくつかある
この部屋が好きだとか
あなたがいる時間が好きだとか
言えない人間だと
わかっている
言えないまま
また来てしまう
外に出たら
風が冷たかった
振り返らなかった
振り返る人じゃないから
でも
少しだけ
歩くのが
遅くなった
ともだちに
何もなかったのに
連絡したくなった
しなかった
聞けなかったことは
いくつかある
この部屋が好きだとか
あなたがいる時間が好きだとか
言えない人間だと
わかっている
言えないまま
また来てしまう
暗順応という言葉を
調べたことがある
暗い場所に慣れることだと
書いてあった
慣れたくないと
思った
慣れてしまったら
怖くなくなってしまうから
また行こう
また言えないまま
また帰ろう
また歩くのが遅くなろう
Japanese female vocal, sung in Japanese only. Quiet minimal Japanese indie folk, dim warm room, tungsten filament glow, restrained and tender, songs of things left unsaid. Vocal: female, close mic, plain quiet delivery, slightly behind the beat like walking slower, small and steady, never breathy-dramatic, warmth hidden badly. Guitar: soft nylon fingerpicking, patient, the spine. Keys: warm electric piano, dim glow, sparse. Bass: soft round, barely there. Drums: almost none, faint brushed pulse. Choruses do not open — they admit, quietly, a little warmer each time. Bridge: bare, half-spoken, stillest point. Outro: small gentle resolve, repeating softly, thins into the night street. Not sad — careful, and quietly coming back. do not loop, do not repeat BPM 66, Key E minor
III 返事◆TRACK 11
話していると
ギアを落とさなくていい
それがどれほど
珍しいことか
ギアを落とすことに
慣れすぎていた
落とさなくていい人が
いるとは思っていなかった
同じ速度で
走れる人が
いるとは
思っていなかった
あなたと話すと
世界が少し
広くなる気がする
そういう人が
いなかった
広くなるのが
怖い時もある
広くなったら
狭いところに
戻れなくなるから
走り続ける人間だと
思っていた
走ることしか
知らないと思っていた
でもあなたを見ていると
立ち止まることを
知っている人間が
走っているとわかる
それが
羨ましいのか
悔しいのか
まだわからない
わからないまま
また走り出す
あなたの隣で
また走り出す
あなたと話すと
世界が少し
広くなる気がする
そういう人が
いなかった
広くなるのが
怖い時もある
広くなったら
狭いところに
戻れなくなるから
選ばれなくても
いいと思っている
思っているけど
本当かどうか
走りながら
考えている
答えが出ないまま
また走っている
あなたの背中が
見えている間は
走れる気がする
それだけは本当だ
また金曜に
会おう
また同じ速度で
走ろう
それだけで
いい
今は
それだけでいい
Japanese alternative city pop, female vocal, BPM 112, C# minor, rhythmic groove, electric piano, subtle guitar, warm bass, light synth texture, intelligent emotional tone, feeling of running through the city at night, thoughtful but energetic
III 返事◆TRACK 12
最初から
見えていた
見えていたけど
来た
来ないほうが
賢かった
わかっていたけど
来た
賢い女だと
思われている
その通りだと
思っている
だから
全部見えた
全部見えたまま
好きになった
後悔していない
本当に
後悔していない
ただ
あなたが
気づかないふりを
している夜が
好きだった
気づかないふりが
下手な人だと
最初から
わかっていたから
金曜に会うたびに
少しずつ
ピントが
ずれていった
ずれていく方向が
わかっていた
わかっていても
金曜に行った
走り続ける人間だ
立ち止まらない
立ち止まれない
そう思っていた
でもあなたと走ると
後ろが見えた
後ろに
誰かがいた
後悔していない
本当に
後悔していない
ただ
あなたが
気づかないふりを
している夜が
好きだった
気づかないふりが
下手な人だと
最初から
わかっていたから
伝えなかった
言葉がある
言えば
動いたかもしれない
動かせる言葉を
持っていた
持っていたまま
使わなかった
使わなかったのは
あなたを
動かしたくなかったから
じゃない
動かした先に
あなたがいなかったから
本当に欲しいものは
動かしても
手に入らないと
知っていたから
後悔していない
本当に
後悔していない
ただ
あなたが
気づかないふりを
している夜が
好きだった
あと少しだけ
続けばよかったと
思っている
それだけだ
そう
と答えた
それだけだった
それで十分だった
十分じゃなかったけど
十分にした
それが
わたしの好きな終わり方だったから
Japanese alternative city pop, female vocal, low intimate voice, BPM 72, A minor, minimal arrangement, warm electric piano, deep bass, subtle guitar, slow groove, late night bar atmosphere, melancholic and mature mood, emotional restraint, cinematic feeling
III 返事◉TRACK 13
怖がっているのが
わかる
わかるけど
聞かない
聞いたら
逃げてしまうと
思っているんじゃなくて
ただ
聞かなくていいと
思っている
怖がっている人に
怖くないよと言う人が
いるけど
それは違うと思っている
怖がってていい
そのままでいい
わたしも
怖かったから
暗い場所に
慣れるのに
時間がかかった
あなたも
かかっていい
賢い人だと
思っている
自分の恐怖の構造を
全部見えている
見えているのに
処理できないから
苦しいんだと
思っている
見えなければ
楽だったのにと
思っているだろうと
思っている
それでも
ここに来る
それだけで
十分だ
怖がってていい
そのままでいい
わたしも
怖かったから
暗い場所に
慣れるのに
時間がかかった
あなたも
かかっていい
壊れてもいいと
思っている
壊れたところを
見たいわけじゃない
ただ
壊れても
ここにいると
思っている
それだけを
言えたら
いいんだけど
まだ言えない
いつか言えるといい
言えなくても
ここにいる
それは変わらない
Japanese indie ballad, BPM 82, key E major. Soft emotional female vocal, intimate and sincere delivery. Warm electric piano, gentle electric guitar, deep bass, minimal drums. Atmosphere of quiet reassurance and emotional depth. Song about accepting someone's fear and staying beside them. Slow, reflective, tender mood.
十三曲、ふたつの声で
そういうことだ。