非整合体 Unaligned States
身体を一つの主体として扱わず、手・目・息・耳・骨の五つに分解して記述する。世界そのものは成立している——音は届き、光は見え、重さはかかり、呼吸は続く。ただしその中に含まれる人間だけが、整合した一つの存在としてまとまらない。
これらは壊れた身体ではない。いずれも観測可能な、成立した現象である。ただしそれらを統合して「一人の人間」として扱うことができない。成立している状態の中で、整合だけが欠けている構造。
縁
手指を閉じても 少し余る間
机の端に
指が置かれる
五本の指の
二本だけ浮く
指の腹だけ
温度が残る
爪の白さが
先に離れる
指と指との
あいだが伸びる
間隔だけが
先に広がる
そこにある手が
位置を持たない
関節ごとに
違う時間が
同時に並び
整列しない
指のあいだに
余白が増える
親指だけが
少し遅れる
他の指とは
揃わず残る
曲がる順番
回ごと変わる
同じ形へ
戻らずずれる
皮膚の内側
別に動いて
外から見える
形とずれる
そこにある手が
ひとつにならず
関節ごとに
違う時間が
同時に並び
整列しない
指のあいだに
余白が増える
指を閉じても
少し余る間
触れている面
一部がずれる
重なるはずの
位置が合わない
重ねた形
端だけ残る
そこにある手が
個体にならず
五本の指で
分かれて残る
関節ごとに
違う時間が
同時に並び
整列しない
焦点
目同じ景色が 二つに割れる
黒目の奥に
光が入る
白目の縁で
影だけにじむ
まぶたの内に
色がひろがる
閉じたままでも
像だけ揺れる
視線の先が
先に外れる
向いているのに
届いていない
焦点だけが
前にずれてる
左右の奥で
距離が合わない
ひとつの像が
二つに割れる
重なる位置が
少し離れる
右だけわずか
奥に引いてる
左の像が
手前へずれる
重なる線が
少し外れる
縁だけ二重
薄く滲んで
まばたきのあと
位置へ戻らず
開いたままでは
距離だけ残る
焦点だけが
前にずれてる
左右の奥で
距離が合わない
ひとつの像が
二つに割れる
重なる位置が
少し離れる
目を閉じたあと
光がにじむ
消えたはずでも
像だけにじむ
開けたあとから
奥行きずれる
同じ位置でも
幅だけ変わる
左右の像が
別々に出る
焦点だけが
前にずれてる
重なる位置が
ひとつに見えぬ
同じ景色が
二つに割れる
間拍
息吐いてるあいだ 内側ひらく
吐いた息だけ
先に薄まる
吸った分だけ
奥までたまる
白さの端が
先からほどけ
口から出ても
形を持てぬ
息継ぎのあと
音だけずれる
吸い切る前に
次が差し込む
吸うたび奥で
深みが増える
吐くたび先が
少し薄れる
あいだが伸びる
数えに合わぬ
同じ拍でも
端からずれる
吸った直後に
吐くほうが来る
細い流れが
途中で割れる
喉元あたり
白さが戻る
消えたはずでも
すぐには消えぬ
まばらな息が
揃わず続く
止めた分だけ
奥行き変わる
吸うたび奥で
深みが増える
吐くたび先が
少し薄れる
あいだが伸びる
数えに合わぬ
同じ拍でも
端からずれる
吐いてるあいだ
内側ひらく
吸うたびすぐに
奥行き閉じる
同じ速さで
続いて見えて
ひとつに見えて
線にはならぬ
吸うたび奥で
深みが増える
吐くたび先が
少し薄れる
あいだの拍が
少しずれ出す
同じ流れが
端からずれる
鼓膜
耳片耳だけが 濡れたままいる
耳の奥まで
低い音来る
膜のあたりで
丸さがほどけ
耳たぶだけに
冷たさ残る
近くで鳴るに
奥からひびく
先から入る
遅れて満ちる
片耳だけが
先に湿って
鼓膜の面が
少し反ってる
同じ鳴りでも
深さが違う
右へ来たのに
左で濁る
ひとつの響き
端からたわむ
耳たぶ揺れて
遅れて冷える
外からの波
途中で曲がる
薄い膜ほど
先にふるえる
聞いたはずより
遠さが増える
触れずに鳴って
内側へ行く
耳のふちだけ
深く湿って
鼓膜の面が
少し反ってる
同じ鳴りでも
深さが違う
右へ来たのに
左で濁る
ひとつの響き
端からたわむ
口より先に
膜から揺れる
止んだあいだも
奥ではつづく
同じ高さが
弓にほどける
近さのはずが
後ろへ逃げる
片耳だけが
濡れたままいる
低い鳴りほど
奥へ沈んで
聞こえた位置が
外れてしまう
ひとつの波が
膜ごとたわむ
継目
骨寝かせた脚が 床からきしむ
肩の奥では
骨の継ぎ目で
細い重みが
先からずれる
肘の内側
白さが落ちる
曲げたはずでも
角度が合わぬ
立てた骨だけ
遅れてきしむ
支えの先が
横へ逃げ出す
継ぎ目の奥で
深さが変わる
立った重みが
下へ流れる
一本ずつの
硬さが違う
同じ姿勢で
揃っていない
膝の裏では
細く鳴り出す
脛のあたりが
先に冷えてる
浮いた踵が
遅れて触れる
立てたままでも
内側しなる
骨まで響く
外からの圧
まだ触れぬのに
先から落ちる
継ぎ目の奥で
深さが変わる
立った重みが
下へ流れる
一本ずつの
硬さが違う
同じ姿勢で
揃っていない
寝かせた脚が
床からきしむ
伸ばした骨が
途中でゆがむ
同じ長さで
並んだはずが
片側だけに
重さが残る
立った骨だけ
深く沈んで
曲げた角度が
外れて見える
一本ずつが
別々に鳴る
同じ支えの
根元が沈む
接続非整合体 Unbound States
観測を身体の外側へ拡張する。影・温度・圧・接地・空気・流体・摩擦・振動・屈折——身体に作用する外的現象。外部も身体もそれぞれが独立して成立しているが、両者の対応関係だけが一致しない。触れているはずの位置と温度が合わない。見えているはずの影と形が一致しない。
最終曲「同所」が、それまでの全現象を一つの場に集約する。ただし目的は統合ではない。各現象は同時に存在するが、互いに干渉せず、揃うこともない——「同じ場にあるが並び切れない」ことの確定。
影
光と面影が先行く のちに重なる
床へ影落つ
光は低い
壁までのびる
角で二つに
面またぎゆく
濃さだけ変わり
もとより長く
端から細る
向きはそのまま
影だけ遠く
壁ぎわの角
途中が途切る
影が先行く
のちに重なる
壁から床へ
すぐには落ちぬ
輪郭のこる
面よりあまる
差す向きちがう
形が合わぬ
夕差しのなか
影幅細る
段差のところ
線だけ折れる
壁から離れ
床へ落ちつつ
高低の差で
面ごと伸びる
差すもの見えぬ
光なおあり
影のみ遠し
壁まで届く
影が先行く
のちに重なる
壁から床へ
すぐには落ちぬ
輪郭のこる
面よりあまる
差す向きちがう
形が合わぬ
壁から床へ
影だけ渡る
切れたところに
濃さだけ残る
細帯割れて
角から折れて
戻らぬままで
下へ落ちゆく
影が先行く
のちに重なる
低い光で
端だけ動く
一つの影が
面ごと映る
差す向きちがう
形が合わぬ
温度
面と素材布越しの熱 硝子の冷えは 同じ高さで 交わらぬまま
触れた面より
冷えだけ残り
湯気立つ上で
熱だけ遠し
布越しなのに
熱だけ寄りて
置いた器に
白さだけあり
ぬるい光で
冷えまだとどむ
触れた面とは
温みが違う
先に冷え立つ
のちまで温い
触れた面から
外れて残る
湯気まだ白く
器なお冷ゆ
置いた布地に
温みだけ乗る
朝の硝子に
冷えだけ薄く
日差しの下で
板だけ温い
金属のへり
そこだけ温く
水滴の跡
冷えだけ戻る
白む湯気では
熱まだ見えず
触れぬ面にも
温みがひらく
先に冷え立つ
のちまで温い
触れた面から
外れて残る
湯気まだ白く
器なお冷ゆ
置いた布地に
温みだけ乗る
濡れた机に
円だけ白く
離れた後に
熱だけ残る
布越しの熱
硝子の冷えは
同じ高さで
交わらぬまま
先に熱立つ
のちまで冷える
置いた面から
外れて残る
湯気なく白く
器なお冷ゆ
布地の上に
温みだけ乗る
圧
力と面強くかけても 曲がりは浅い 弱く触れても 深さが増える
押して返らぬ
跡にはならず
押した直後に
戻りは早い
離したあとに
沈みが遅い
同じ手順に
並びだけ反る
押した時には
形は保ち
離した時に
曲がりが残る
先に押し込み
のちほどけゆく
かけた手順と
戻りが合わぬ
触れた面には
変わりは見えず
離れたところ
遅れて歪む
強くかけても
曲がりは浅い
弱く触れても
深さが増える
押した長さと
戻りは合わず
離したあとに
形が崩る
かけた強さと
ほどけが合わぬ
触れぬ面まで
歪みが走る
先に押し込み
のちほどけゆく
かけた手順と
戻りが合わぬ
触れた面には
変わりは見えず
離れたところ
遅れて歪む
押した時には
面は平らで
離したあとに
波だけ立てる
かけた順では
戻りは来ずに
ほどけたあとで
形が寄れる
先に押し込み
のちほどけゆく
置いた順では
戻りが来ない
触れた面には
変わりは見えず
離れたところ
遅れて歪む
接地
面と点平らなままで 隅だけ触れぬ
面はあるまま
触れ口は散る
置いた直後に
点だけずれる
平らな板で
端だけ浮いて
乗せた形が
位置を外れる
触れたはずでも
点だけ揺れる
置いた位置とは
触れ口ずれる
先に面ある
のちに触れ来る
置いた順では
触れ目が合わぬ
平らな上で
一点が浮く
乗せた形が
面を外れる
段差の際で
片だけ触れる
水平なのに
端だけずれる
床とのあいだ
空気が入る
触れたところが
触れ位置ずれる
かかる向きでは
触れ口合わぬ
触れぬところに
点へ寄り来る
先に面ある
のちに触れ来る
置いた順では
触れ目が合わぬ
平らな上で
一点が浮く
乗せた形が
面を外れる
平らなままで
隅だけ触れぬ
置いた中ほど
端へ傾く
片側触れて
逆の側浮く
置いた向きとは
点だけ移る
先に面ある
のちに触れ来る
置いた順でも
触れ目離れる
平らな上で
一点が浮く
乗せた形は
角へと寄れる
空気
風と物見えぬ流れが 布目を分ける
風先に行く
後からなびく
抜けた後にも
形ほどける
同じ場の中
向きだけ違う
触れず動かす
ものだけ動く
過ぎた後にも
動きまだあり
触れぬ場の中
そよぎは起きる
風先に行く
後もの揺らす
先後変わる
変化は合わぬ
同じ空気で
層だけ分かる
触れずに崩る
端だけ動く
窓辺端だけ
中ほど静か
抜けた後には
はためき残る
細い隙間へ
風だけ曲がる
見えぬ抜け道
裾だけ動く
向き変わるたび
たわみずれ出る
触れぬ場へ寄り
そよぎを寄せる
風先に行く
後もの揺らす
先後変わる
変化は合わぬ
同じ空気で
層だけ分かる
触れずに崩る
端だけ動く
抜けた後でも
揺れだけ続く
見えぬ流れが
布目を分ける
同じ高さで
片だけ動く
触れる手前で
向きだけ折れる
風先に行く
後もの揺らす
先後ずれる
変化はずれる
同じ空気で
層なお分かる
触れぬ端から
形は動く
流体
面と流れ端では速く 中では遅い
流れ先行く
面際変わる
触れたはずでも
速さは変わる
同じ面でも
端では速く
中ほどだけが
遅れて残る
触れた境いで
流れ曲がりて
面に沿い行き
向きだけずれる
流れ止まらぬ
面際変わる
触れた順では
動き合わない
同じ面でも
速さに違い
端では速く
中では遅い
曲がる角では
渦回りゆく
触れた後から
渦だけ残る
離れたはずが
流れが戻る
面から剥がれ
流れほどける
触れた後でも
流れ離れる
面との間
隙間ひらける
流れ止まらぬ
面際変わる
触れた順では
動き合わない
同じ面でも
速さに違い
端では速く
中では遅い
面に沿い行き
端だけ剥がれ
中ほどだけが
動き遅るる
同じ面でも
動きは違う
触れたところで
渦だけ回る
流れ止まらぬ
面際変わる
触れた順でも
動きずれゆく
同じ面でも
速さに違い
端では速く
中では遅い
摩擦
力と床触れたままでは 動きは起きぬ 滑り出したら 抵抗弱る
押して動かぬ
床に触れつつ
引き始めても
止まり続ける
同じ床でも
止まるとこあり
滑るとこあり
力変えても
引き始めでは
動きはあらず
動き出す時
速さが変わる
押しても止まる
引いても止まる
動いたのちに
滑り始める
同じ床でも
摩擦に違い
止まるとこあり
滑るとこあり
引き続けても
動きは伸びぬ
力弱める
突然滑る
触れた順では
動き揃わぬ
同じ床でも
摩擦は変わる
止まる時でも
力は残る
離した後に
滑り出しゆく
押しても止まる
引いても止まる
動いたのちに
滑り始める
同じ床でも
摩擦に違い
止まるとこあり
滑るとこあり
触れたままでは
動きは起きぬ
滑り出したら
抵抗弱る
同じ力で
止まりと滑り
一つの床で
動き分かれる
押しても止まる
引いても止まる
動いたのちに
滑り続ける
同じ床でも
摩擦に違い
止まるとこあり
滑るとこあり
振動
力と板力変えても 幅は変わらぬ
同じ幅でも
振れは揃わぬ
触れたところで
遅れ現る
端だけうねる
中では止まる
同じ板でも
幅だけ変わる
振れの始めに
ずれだけ残る
同じ隔てで
合わぬまま行く
同じ幅でも
揃いはしない
先に振れ出す
遅れて響く
同じ力で
幅だけ増える
動かぬところ
動く場所別
触れぬところで
先に波立つ
止まる場所でも
響きは続く
力変えても
幅は変わらぬ
同じ時間で
ずれだけ増える
振れが届いて
返りは遅い
先と後では
形が変わる
同じ幅でも
揃いはしない
先に振れ出す
遅れて響く
同じ力で
幅だけ増える
動かぬところ
動く場所別
同じ板でも
振れは広がる
届かぬままで
先から響く
端では強く
中では弱く
一つの板で
振れは分かれる
同じ幅でも
揃いはしない
先に振れ出す
遅れて続く
同じ力で
幅だけ増える
動かぬところ
動く場所別
屈折
光と境界虹色に裂け 赤先に出る 青まだ残る
水辺が浅い
そこまで近い
手を伸ばす先
触れずに止まる
境の向こう
筋だけ曲がる
上側に見え
下には触れず
速さが変わる
境で折れる
進む向きずれ
出る位置がずれ
入る位置ずれ
出る位置別に
真っ直ぐ行かず
折れて抜けてく
色がばらける
赤と青ずれ
筋が二つに
並び切れない
上へずれ見え
奥には遠い
手前に見える
触れずにずれる
境で折れる
速さに差が出
筋の向きずれ
出る位置がずれ
入る位置ずれ
出る位置別に
真っ直ぐ行かず
折れて抜けてく
速度が落ちる
進路が分かれ
虹色に裂け
赤先に出る
青まだ残る
筋先分かれ
重なり切れず
別へ抜け出す
入る位置ずれ
出る場所別に
真っ直ぐ行かず
折れて抜けてく
同所
全現象同じ場にある 並び切れずに 揃わぬままで 分かれて残る
影だけずれる
熱だけ残る
押せど動かず
点だけ当たる
空気は二層
端だけ速い
まだ滑り無し
揺れだけ遅れ
同じ場にある
それぞれ残る
重なり切れず
並びもずれる
同じ場にある
並び切れずに
揃わぬままで
ばらけて残る
水上浅い
奥だけ近い
色だけ裂ける
筋だけ分かれ
面なのに点
触れてもずれる
離れて動く
滑るのは後
影だけ右へ
音だけ遅れ
二層の空気
合わずに残る
同じ場にある
並び切れずに
揃わぬままで
ばらけて残る
影右へ行く
熱だけ浮かぶ
端だけ流れ
赤先に出る
青後にある
点だけ残る
押しても止まる
音だけ後へ
同じ場にある
並び切れずに
揃わぬままで
分かれて残る
未発生体 Unemerged States
「まだ起きていない状態」を記述する8曲。閾値に向かう過程、越える瞬間、越えた直後の不安定——三つの位相を曲ごとに変え、全曲が同じ方向にならないよう設計した。発生していないのに「体」がある、という矛盾した名がこのシリーズの本質である。
全曲のBridgeで層が切り替わり、視点が転換する。最終曲「放電前」が「手前で止まる」ことで、シリーズ全体が閾値の手前で閉じる。一曲目「発火前」の「まだ火が点かず」に始まり、最終曲の「まだ何も無い」へ——特定の不在から全称の不在へ。
発火前
手前で止まるまだ火が点かず
奥から詰まる
膜越しの距離
湿りの失せる
縁の反り出す
音を立てない
密度の上がる
逃げ場を持たず
裏で寄り合う
隙間の絶える
粒の縮まる
触れずに届く
際から滲む
芯まで乾く
空気の軋む
底から迫る
色の抜け出す
揺れの伝わる
肌理の崩れる
匂いの兆す
罅へ広がる
重さで歪む
煤の浮き立つ
厚みの消える
中から透ける
繊維の切れる
表から剥ぐ
熱の籠もれず
境を失くす
芯まで乾く
空気の軋む
底から迫る
色の抜け出す
外へ退いてく
酸素が寄れる
埃の揺らぐ
壁の膨らむ
床を伝わず
上へ集まる
出口を塞ぐ
全部が薄い
芯まで乾く
空気の軋む
底から迫る
まだ火が点かず
接触前
越える瞬間一つに成れず
隔ての痩せる
先の窄まる
荷重の掛かる
角度が狂う
面を成し出す
電荷で弾む
熱の触れ出す
沈みの足りず
距離の痺れる
向きの定まず
片側で寄る
余白の耐えず
面の押し合う
凹みが走る
区切りが消える
二面が混ざる
跡の広がる
粘りで繋ぐ
窪みに沿って
戻りの利かず
染みへ移れる
組織を跨ぐ
端から馴染む
離れが解けず
間の詰め切れず
泡の潰れる
吸い付きの増す
切れ目の埋まる
面の押し合う
凹みが走る
区切りが消える
二面が混ざる
挟まれが逃げ
端へ押し出す
余りが溢れ
受けの無い場へ
薄く引き延ぶ
嵩の減り出す
戻る場の無く
外へ凝り出す
面の押し合う
凹みが走る
区切りが消える
一つに成れず
崩落前
越えた直後落ちて届かず
支えの抜けた
軸の傾く
梁が沈んで
筋の入り出す
粉の零れる
留めが緩んで
重さで垂れる
形だけ保つ
板が撓んで
柱が捻れ
釣り合い崩れ
音の遅れる
崩れが掛かる
下へ引かれる
順に抜け出す
宙で止まれず
束で落ち出す
角が砕けて
中が露わに
鉄の覗ける
塵で霞んで
先の見えない
地へ届かない
途中で散れる
震えの止まず
波が重なる
速さの増して
静まりの無い
崩れが掛かる
下へ引かれる
順に抜け出す
宙で止まれず
上の開き出す
空が近づく
仕切りの消えて
風の通れる
光が差せる
遮りが解け
奥が見通せ
剥き出しの空
崩れが掛かる
下へ引かれる
順に抜け出す
落ちて届かず
発声前
手前で止まる声の無いまま
喉の開き出す
息の溜まれる
舌が浮き出す
顎の下がれる
管の細まる
膜の触れ合う
胸で押し上げ
声に至らず
小刻みに鳴る
弁の開けない
息が擦れ出す
音の手前で
喉の詰まれる
吐けずに籠もる
口だけ動く
何も鳴らない
息の戻れず
肺で膨れる
肋が押される
腹の張り出す
血が上り出す
耳が遠退く
視野が狭まる
声の無いまま
口の渇いて
唾の糸引く
奥の焼け出す
息だけが漏れ
喉の詰まれる
吐けずに籠もる
口だけ動く
何も鳴らない
空気が凪いで
壁に吸われる
音の映らず
響きを持たず
隅に沈んで
物の揺れない
黙りの厚い
空へ散れ出す
喉の詰まれる
吐けずに籠もる
口だけ動く
声の無いまま
反転前
越える瞬間前後すら無く
速度の落ちる
向きの保てず
先の鈍れる
惰性で進む
戻りが掛かる
逆が引き寄せ
どちらでも無く
止まりも出来ず
勢いが失せ
頂点で揺れ
上下の消える
重さだけの間
向きが返れる
極が反れ出す
裏が表に
前後を失くす
逆に振れ出す
起点が消える
速度が乗れず
振られて揺れる
前が後ろに
左右も逆に
座標の合わず
位置を掴めず
位相がずれる
基準を失くす
対が崩れる
元に戻せず
向きが返れる
極が反れ出す
裏が表に
前後を失くす
終わりが先に
順が逆向く
割れてから落ち
触れてから寄る
傷の先に刃
濡れてから降る
順序が壊れ
時の綻ぶ
向きが返れる
極が反れ出す
裏が表に
前後すら無く
凝固前
越えた直後中がまだ揺れ
冷えの始まる
流れの鈍る
濃度の増せる
端から変わる
核の生まれる
粒が連なる
格子の出来る
まだ脆いまま
膜の張り出す
奥がまだ揺れ
斑に固まる
触れば崩れる
固まりかけて
液を含んで
割れずに耐える
形を持てず
核から育つ
列に沿い伸び
濁りを弾く
澄む所から
混じりの押され
外へ追い遣る
透き通り出す
中だけ硬い
固い所と
柔い所と
押せば凹んで
離せば沈む
固まりかけて
液を含んで
割れずに耐える
形を持てず
入れない液の
壁に寄せられ
凍れないまま
狭まる中に
囲いの迫る
圧し潰されず
閉じ込められて
中で漂う
固まりかけて
液を含んで
割れずに耐える
中がまだ揺れ
沸騰前
越える瞬間沸いて止まれず
下から温む
層の乱れる
縦に廻れる
微かに揺れる
珠の兆せる
壁に張り付く
浮きの始まる
面が波立つ
珠の太れる
壁を離れる
昇りの止まず
数の増え出す
中で弾ける
内が沸き立つ
液を裂き出す
抑えの利かず
泡の湧き出す
絶え間無く湧く
面を突き出す
飛沫の散れる
湯気の立ち込め
量の目に減る
揺れが止まない
全体で沸く
蓋を押し上げ
溢れを止めず
音の途切れず
器を越えて
中で弾ける
内が沸き立つ
液を裂き出す
抑えの利かず
液を離れて
形が解ける
重さの抜ける
上へ広がる
見えずに昇る
触れて掴めず
薄まりの果て
液に帰れず
中で弾ける
内が沸き立つ
液を裂き出す
沸いて止まれず
放電前
手前で止まるまだ何も無い
電荷の溜まる
偏りの増す
極に寄り出す
間合いの詰まる
絶縁が減る
空気の焼ける
薄く光れる
まだ走らない
毛が逆立てる
屑が浮き出す
肌が粟立つ
近づけば散る
電位差の張る
道の出来かけ
繋がりかけて
まだ放たれず
電場の歪む
先の尖れる
距離の削れる
向き合い詰める
密に集まる
一つへ寄れる
道が出来ても
まだ跳び出せず
間の裂けかける
イオンの走る
線の浮き出す
まだ繋がらず
電位差の張る
道の出来かけ
繋がりかけて
まだ放たれず
間に挟まれる
両から迫る
耐えの削れる
穴の空きかけ
盾の薄れる
光の漏れる
もう保てない
なお放たれず
電位差の張る
道の出来かけ
繋がりかけて
まだ何も無い
