FULL ALBUM
電球色
十三曲入り ・ ぜんぶ、暖かい色の下で
街灯の色に、名前があることを知っていましたか。3000K──電球色。夕方の窓の、鍋の湯気の向こうの、あの暖かい白の名前です。
十三曲、ぜんぶその光の下で。急がない人と、急がなくなっていく人の記録。
I 昼白色5000KTRACK 01
いつもの帰り道だった
何も変わらないはずだった
ただ 君が立っていた
街灯の下で 上を見ていた
「この光 何色に見えますか」
振り返らずに 君が言った
俺に言ったのか 独り言か
わからないまま 立ち止まった
3000K 電球色
君はそう教えてくれた
数字で光に名前をつける人が
いることを 知らなかった
急いでいたはずだった
どこかに向かっていたはずだった
でも その数字が
頭から 出ていかなかった
世界に名前をつけて
ひとつずつ 丁寧に見ている
そういう人が いるんだ
知らなかった
3000K
その光の中で
君が少しだけ笑った
何でもない夜だった
何でもない場所だった
それだけのことが
ずっと 残っている
「暖かい色が好きなんです」
それだけ言って 君は歩き出した
俺はメモした
3000K と
なぜメモしたのか
自分でもわからなかった
ただ 忘れたくなかった
その数字を その声を
急がなくていい場所が
こんなところにあったのか
気づかなかった
ずっと通ってた道なのに
3000K
その光の中で
君の横顔が見えた
何でもない夜だった
何でもない場所だった
それだけのことが
世界を 変えた
暗いから見えるものがある
慣れてから見えるものがある
君はそれを知っていた
ずっと前から
俺はまだ 慣れていない
でも 慣れたいと思っている
この光の速さで
ゆっくり
3000K
電球色
暖かい色が 好きなんです
その声だけが
今もまだ
聞こえている
Japanese indie pop ballad, male vocal. Calm emotional delivery, intimate storytelling. Tempo around 80 BPM. Instruments: electric piano, clean electric guitar, soft bass, light drums, ambient synth pads. Atmosphere: quiet Tokyo street at night, warm street light, romantic and nostalgic mood. Cinematic, gentle, reflective.
I 昼白色5000KTRACK 02
店を出て 空を見上げた
「今日の夕方 いい色してるね」って
見上げたら ほんとにいい色で
君がいなかったら 気づかなかった
歩く速度が 変わらない人
俺が早いのか 君が遅いのか
三歩目くらいで もう合ってる
合わせてるんじゃなくて 合っていく
知らない路地に 曲がる
「こっちに猫がいるの」って
いるの じゃなくて いたんだろう 前に
この街 全部 覚えてるんだね
ずるいよ そういうの
何にもしてないのに ぜんぶ持っていく
夕焼けの色も 猫の名前も
今日がいい日だったことも
ぜんぶ 君のせいにしていい?
小さな店 カウンターに並ぶ
「ここの照明 好きなの」って 教えてくれた
照明のことは 俺にはわからない
でも 居心地がいい それだけわかる
出てきた料理に 少しだけ目を閉じた
美味しかったんだ
その横顔を 一生覚えてるかもしれない
大げさじゃなくて ほんとうに
帰り道 壁に手を触れた
何を感じてるんだろう
聞かない 聞いたらたぶん
「温度」って 一言で返される
ずるいよ そういうの
特別なことは 何もないのに
全部 特別になっていく
口の端だけの 笑い方も
声が静かになる 瞬間も
そういうの ぜんぶ ずるい
角を曲がったら 猫がいた
しゃがんで 見てる 触らない
ただ 見てる
「この子 目がきれいだね」って
俺も 見てたよ
猫じゃなくて
しゃがんでる 君の横顔を
「帰りたくないな」って 小さく言った
聞こえてないと思ってるだろう
聞こえてるよ
俺も帰りたくないよ
ずるいよ ほんとに
何でもない顔して
こんなに 持っていかないでよ
夕焼けも 猫も 壁の温度も
全部 君の色に 染まっていく
たぶん もう 手遅れだと思う
三歩目くらいから
歩幅が合った あの瞬間から
ずっとこうなることは 決まってた
ずるいよ
ほんとに ずるい
Japanese indie pop, Male vocal, A song about being stolen without knowing it, Acoustic guitar arpeggio only at the start, No drums until bridge, Vocal: male, close mic, conversational, half-smiling, The voice of someone losing an argument with himself, Warm, unpolished, not trying to be cool, Guitar: acoustic arpeggio throughout, Gentle, unhurried, Like footsteps matching pace, Clean electric guitar enters gradually, adding color like a sunset, Bass: warm, subtle, appears slowly, Never dominates, Walks underneath like a cat following you home, Bridge: brush drums enter softly, The moment a cat appears in an alley, Gentle, careful, Then everything drops away, Voice alone, Almost speaking, One line in near-silence, Then instruments return gently for final chorus, Production: warm, intimate, open air, The sound of walking through backstreets at dusk, Space between notes, BPM 80, The pace of someone who used to walk fast but doesn't anymore, Sung in Japanese
I 昼白色5000KTRACK 03
信号が変わるまでの間に
君が何を見ていたか 当ててみたくなる
排水溝に落ちた銀杏の葉か
錆びた自転車のベルか
いつもの倍の時間をかけて
同じ道を歩いてるだけなのに
知らない街みたいだ
急いでたんだな 俺は
ずっと
二人分の歩幅で 世界が広くなる
余白のある場所に 風が入ってくる
何も持たないまま 並んで歩くだけ
それだけのことが こんなに難しかった
「まだ決めなくていいよ」って
あれは優しさだと思ってた
違った
あれは君の 生き方だった
答えを出す前に 黙ることを
俺は誰にも 習わなかった
選択肢を潰して 最短を選んで
それを正しさだと 思い込んでた
止まっていいんだな ここで
少し
二人分の歩幅で 景色が変わっていく
走ってた頃には 見えなかったものばかり
何も言わないまま 隣にいるだけ
それだけのことが こんなに温かかった
君の沈黙には 体温がある
俺の沈黙には まだ言い訳がある
同じ黙るでも 全然違うから
もう少しだけ 君の速さを覚えたい
二人分の歩幅で 夜を歩いている
行き先は決めてない それでいいと思えてる
明日も隣にいるかは わからないけど
今 ここにいることだけ ちゃんと知ってる
もう少しだけ ゆっくり
もう少しだけ
Japanese indie pop / city pop ballad. Male vocal, warm and intimate. 80 BPM, reflective mood. Clean electric guitar, electric piano, soft bass, light drums. Atmosphere of a quiet night walk after a traffic light. Calm, nostalgic, gentle, emotional but restrained.
I 昼白色5000KTRACK 04
靴下のまま 君の部屋に上がる
三回目になると もう迷わない
スリッパの場所も 電気のスイッチも
押さなくていいことも 知ってる
窓を少し開けて 雨の音を入れる
「今日のは いい雨だね」って
いい雨と悪い雨が あるらしい
俺にはまだ 聞き分けられない
君はローテーブルに 図面を広げて
俺はソファの端で 本を開いた
それだけの土曜日
雨の音と ページをめくる音
シャーペンが紙に触れる音
時計の音は 聞こえない
たぶん止まってるんじゃなくて 要らないんだ
君が前髪を耳にかけた
それだけのことを 覚えてる午後
何もしなかった日が
いちばん長く残るって 知らなかった
「コーヒー淹れよっか」って立ち上がる
君の豆 君のやり方で
お湯の温度が どうとか 蒸らしが どうとか
覚えたふりして 実は毎回違う
マグカップ 二つ 湯気が揃う
グレーのと 白いのと
淹れたてを すぐ飲まない 君がそうだから
少し冷ますのを 待てるようになってた
君は図面に戻って
俺はコーヒーに口をつけた
それだけの土曜日
雨が強くなって 窓を少し閉める
それでもまだ 音は聞こえてる
「帰れなくなるかもね」って 君が言う
困ってない顔で
洗濯物 取り込み忘れたかも
まあいいか 明日も降るらしい
何も起きない午後の まんなかで
こんなに安心してる自分がいる
本のしおりを挟んだまま 眠ってたらしい
目が覚めたら 毛布がかかってた
君はまだ図面を見てる
シャーペンの音だけが 動いてる
起きたことには 気づいてるくせに
何も言わない そういう人
俺もまだ寝てるふりを する
この時間が 終わるのが惜しいから
雨が止む気配がする
空が少しだけ明るくなって
カーテンの色が 変わっていく
「あ、やんだね」って 君が顔を上げる
帰らなきゃと 思うのに
靴下のまま 動けないでいる
「いればいいのに」とは 言わないで
ただ コーヒーを もう一杯淹れてる
雨と 本と 君の部屋
ぬるくなった コーヒー
この午後の ぜんぶ
Japanese indie pop, Male vocal, Rainy Saturday afternoon music, Not a performance — a song heard from the next room while it rains outside, The quietest of the three, Warm, still, almost motionless, Vocal: male, soft, barely singing, The voice of someone half-asleep on a couch, Close mic, Mumbling warmth, Guitar: acoustic, minimal fingerpicking, Two or three notes repeated, Like rain on a window, Unhurried, Electric guitar: barely there, A clean hum that appears and disappears, Bass: warm, slow, almost ambient, Not walking — resting, A pulse felt beneath the rain, Drums: nearly absent, A single brush stroke here and there, The rhythm of a pen on paper, Silence is the main instrument, Piano: sparse single notes, Like drops falling from an eave after rain stops, Production: warm, intimate, Rain audible in the room, The sound of pages turning and coffee cooling, Small room reverb, BPM 75-80, The pace of an afternoon where time is not needed, No builds, Same stillness throughout
II 温白色3500KTRACK 05
電球が切れたから 買いに行こうって
十五分で終わる 土曜の買い物
スニーカー履いて 財布だけ持って
近所のホームセンター それだけのはずだった
照明コーナーの前で 君が止まった
一個ずつ手に取って パッケージの裏を読む
「これ2700って書いてあるけど嘘」
何の話? でも楽しそう
こんなに喋る人だったっけ
こんなに目がきらきらする人だったっけ
知らなかった
電球の前の君を 知らなかった
電球ひとつ 買いに来ただけなのに
もう四十分 経ってる
あと何コーナー 残ってるの
全部つきあうよ 全部見せてよ
電球ひとつ それだけの土曜日が
こんなに長くて こんなにいい
君が好きなものの話をする横顔
もっと見ていたい ずっと
工具のコーナーで 木を触ってた
手のひらで 表面をすうっと
何を感じてるんだろう いつも思う
聞いたら「温度」って言うんだろうけど
ペンキの色見本 並べて聞いてくる
「この白とこの白 ぜんぜん違うの わかる?」
わかんない 正直に言ったら
嬉しそうに 説明が始まった
白にも種類があること
冷たい白と あたたかい白
青に寄る白 黄に寄る白
世界ってそんなに 細かかったんだ
こんなに楽しそうな人だったっけ
こんなに 手を動かす人だったっけ
知らなかった
好きなものの前の君は こんなに明るい
電球ひとつ 買いに来ただけなのに
カゴには多肉植物が増えてる
「この子 光量少なくても大丈夫な顔してる」
植物に 顔があるらしい
電球ひとつ それだけの用事から
二時間半が 溶けていった
レジに並ぶ君が ちょっと恥ずかしそうで
「ごめん 長くなった」って 謝るのが かわいい
帰り道 多肉植物を 両手で持ってる
大事そうに 揺れないように
「名前 つけていい?」
いいよ
「じゃあ......まだ決めない」
出た
まだ決めない
君はいつもそう
でも そういうとこが
好きなんだよ たぶん
いや たぶんじゃない 確実に
電球ひとつ 買いに来ただけだった
ただの土曜の ただの買い物
でも帰り道 隣を歩く君は
さっきまでの二時間分 ちょっとだけ照れてる
電球ひとつ 取り替えたら
キッチンに灯りが戻る
それだけのことなのに
君と選んだ灯りは ちょっと特別に見える
多肉植物の名前
来週あたりに 決まるかな
決まらなくてもいい
そのうちね
そのうち
Japanese indie pop / acoustic pop. Male vocal, warm and intimate. Tempo around 90 BPM. Instruments: acoustic guitar, electric piano, soft bass, light drums, subtle strings. Mood: warm everyday love story. Saturday afternoon shopping together. Atmosphere: cozy, gentle, nostalgic.
II 温白色3500KTRACK 06
街灯の色が 気になるようになった
あれは暖色かな 何ケルビンだろう って
夜道で立ち止まる 前は ただの帰り道だった
今は暗さにも 種類があるって知ってる
コーヒーを淹れて すぐ飲まなくなった
少し待つ あの数分が 惜しくなくなった
湯気を見ている それだけのことが
いつからか 一日で一番静かな時間
いつからだろう こうなったの
たぶん 君が 何でもない顔で
「いい光だね」って言った あの日から
ぜんぶ君のせいだ
朝の光で 目が覚めるのも
雨の日 窓を少し開けるのも
歩くのが 遅くなったのも
ぜんぶ 君のせいだ
困ってる ほんとに
壁を触る癖がついた
素材の温度なんか わかるわけないのに
カーテンを リネンに変えた
光の通し方が 全然違うんだ
美味しいもの食べると 目を閉じるようになった
0.5秒だけ 君と同じ
そんなこと 誰にも言えない
ぜんぶ 君の辞書から盗んだ仕草
返したくても もう返せない
君がくれたものは ぜんぶ
返品できない種類の ものばかり
ぜんぶ君のせいだ
沈黙が 怖くなくなったのも
一人の部屋が 少し広いのも
「まだいていいよ」が いちばん嬉しいのも
ぜんぶ 君のせいだ
もう手遅れだ
君は何もしてないって 言うだろう
隣にいただけだって
それがどれだけ 大変なことか
たぶん 君だけが知らない
教わったんじゃない 移ったんだ
君の時間の速さが そのまま
何もしないで いてくれたから
俺は変われたんだと思う
ぜんぶ君のせいだ
影のほうが 好きになったのも
夜が怖くなくなったのも
急がなくても 間に合うと知ったのも
ぜんぶ ぜんぶ 君のせいだ
困ってる 本当に困ってる
でも もう戻れないから
このまま 困らせてくれ
ずっと
君のせいだ
ぜんぶ 君のせいだ
Japanese indie pop, Male vocal, A love song disguised as a complaint, Light shuffle rhythm, Not sad — smiling while confused, Vocal: male, close mic, conversational, slightly amused, The voice of someone pretending to be annoyed but failing, A smile leaking through every line, Warm, unpolished, Guitar: acoustic, light shuffle strumming, A gentle bounce, Clean electric guitar adds warmth between phrases, Bass: round, melodic, groovy, Carries the shuffle feel, The rhythm of someone walking differently than they used to, Drums: light shuffle beat, Brushes with a swing, Playful but never loud, Bridge: tempo drops, Drums almost disappear, Voice becomes sincere, The smile fades and something real shows through, Then shuffle returns for final chorus, Production: warm, intimate, clear, Space between instruments, BPM 78 with shuffle feel, Sung in Japanese
II 温白色3500KTRACK 07
商店街の端っこ 君が立ち止まる
八百屋のおじさんと 目が合って笑う
「かぶ、安いね」って 俺に言う
買ったことないけど 「いいね」って言う
ビニール袋 二つ 片手ずつ
並んで歩く 日曜の三時
影が長い 冬が近い
でもコートはまだ 早い
特別なことは 何もない
ないのに なんだろう この感じ
君と選ぶ 魚の目が澄んでるとか
そんなことで 笑える午後がいい
エコバッグの持ち手が絡まって
ほどくのが もったいないくらい
帰り道 夕焼けが綺麗とか
そんなことを ちゃんと言える二人がいい
献立なんて 決まってないけど
まあいいか キッチン立てば 何か出来る
君が魚を焼く 俺がサラダを切る
換気扇の音と 鼻歌が混ざる
「ちょっと味見して」差し出す指先
塩が足りない 足りないくらいが好き
テーブルに並べた 二人分の皿
大したもんじゃない ごはんと味噌汁
焼き魚と サラダと
「いただきます」の声が揃うこと
特別なことは 何もない
ないまま 続けばいいのに
君の味噌汁 毎回ちょっと違う
それがいい 同じ日がないみたいで
洗い物しながら 窓の外見て
「今日の月 丸いね」って それだけ
テレビもつけない 音楽もかけない
二人の気配だけで 部屋が鳴ってる
ソファの端と端 足だけ触れてる
これ以上は なくていい
レシートを ポケットから出す
かぶ 鯵 豆腐 ねぎ
合計 千二百円の日曜日
たぶん 一番 贅沢な使い方
君と選ぶ 少し曲がったきゅうりとか
そんなことが ちゃんと 嬉しい
エコバッグの中で 卵 割れないように
歩幅 少しだけ 丁寧になる
帰り道 同じ角を曲がる
同じ階段を上がる 鍵を開ける
靴を脱ぐ ただいまの顔をしてる
日曜と魚と 君がいる
それだけの午後 それだけがいい
Japanese indie pop, Male vocal, Sunday afternoon music, Not a performance — a song playing in a cafe that a couple barely notices, then remembers on the walk home, Warm, unhurried, daylight, Vocal: male, soft, conversational, Not singing to anyone — just humming with a smile, Close mic, Relaxed, unpolished, no effort to impress, The voice of someone remembering a good day, Guitar: acoustic fingerpicking as the backbone, Warm, round, like sunlight through a window, Simple patterns that feel like breathing, Electric guitar subtle and clean, adding color, never leading, Bass: warm, groovy but restrained, Walks slowly underneath, The Sunday pace, Drums: light, brushed, laid-back swing feel, Never pushing, The rhythm of walking side by side, Production: warm, analog, clear but soft, Space between instruments, Everything breathes, No builds, no climax, Same temperature throughout, BPM 85-90, The pace of a walk home with grocery bags, Sung in Japanese
II 温白色3500KTRACK 08
黒いジープの助手席に 君が乗ってる
それだけで なんか おかしくて
「こういうの乗るんだ」って 見上げた顔
俺だって意外なとこ あるんだよ
東名に乗る 窓の外 ずっと見てる
遮音壁が途切れるたびに 身体が前に出る
子供みたいだ って思った
言わないけど 横で笑ってた
「音楽 何かかける?」
「任せる」
俺のプレイリスト 誰にも聴かせないやつ
車の中だと なぜか 平気で
片道一時間半の 距離がちょうどいい
長すぎず 短すぎず
話しても 黙っても いい速度で
景色が 流れていく
助手席の君が 三曲目で言った
「これ 好き」
どの曲かは 教えてくれない
ずるい 気になる ずっと気になる
海老名で降りて コーヒー二つ
俺のぶんは 少し冷ましてから渡してくる
もう知ってるんだ 俺の飲み方
何も言わずに 覚えてるのが 君だ
足柄あたりで 富士山が出た
「あ」って 聞いたことない声が出た
自分でびっくりして 小さくなる
富士山じゃなくて 自分の声に驚いてる
それ 俺だけが見てるんだろうな
普段の君しか知らない人は
こういう「あ」を 知らない
得した って思った
御殿場の午後 君は買い物じゃなくて
外壁を触って 照明を数えて
「この通路 色温度バラバラ」って
お前 買い物する気 あるの?
結局 買ったのは ドリッパーひとつ
白くて小さい 一杯用
「うちに来たとき 使って」って
自分のものは 何も買わない そういう人
帰りの東名 渋滞にはまる
君は嫌がらない
「止まってる時間も好き」って言う
高速道路でも それ 適用するんだ
夕方の光が 車内に差して
「今 3200Kくらい」って
俺の車 照明器具じゃないんだけど
口の右端だけ 笑った
渋滞の中で マフラー渡した
グレーのカシミア
「いいの?」って 少し固まった顔
いいよ 似合うの 知ってたから
帰り道 君は眠った
シートを少し倒して
マフラーに顔を 半分埋めて
新品なのに もう自分のもの
ラジオを消した
エンジンの音と 君の寝息だけ
足元に ドリッパーの紙袋
渋滞の赤いテールランプが 並んでる
急がなくていい
このまま渋滞でいい
隣で眠ってるなら
何時間だって 構わない
黒いジープの助手席に
マフラーに埋もれた君がいる
たぶん これが
俺のいちばん好きな景色
Japanese indie pop / soft city pop. Male vocal, warm and reflective. Tempo around 95 BPM. Instruments: clean electric guitar, soft drums, bass groove, electric piano, subtle pads. Mood: long drive on the highway with someone you love. Atmosphere: late afternoon light, road trip feeling, gentle and nostalgic. Style: Japanese indie pop / mellow city pop.
II 温白色3500KTRACK 09
「海に行かない?」って 珍しく君から
電車で一時間半 窓側の横顔
トンネルを抜けるたび 目を細める
光が変わるのが わかるんだ 君には
十一月の海は 誰もいなかった
風が強くて 君の髪がめちゃくちゃで
直さないまま 笑ってた
その顔を 俺は撮れなかった
「きれいなものは 目が覚えてるから」
「忘れそうなものだけ 撮る」
そう言って 錆びた手すりに カメラを向ける
俺には ただの手すりだったのに
フィルムは残り何枚だろう
三十六枚のうちの 何番目に
俺はいるんだろう
いなくてもいい 君が選んだ景色の隣にいる
この日を いつか現像するとき
光の加減で 思い出すかな
風がぬるくしたコーヒーのことも
何にもしなかった午後のことも
防波堤に並んで コーヒーを飲んだ
「この辺で育ったんだ」って 一言だけ
海を見る目が 少し違った
観光客じゃない 帰ってきた人の目
聞きたいことは たくさんあった
この海で何を見てたの
誰と来てたの 何を失くしたの
でも聞かなかった 君が話すまで待つと決めた
猫がいた 君はしゃがんだ
カメラは構えなかった
「この子は目が覚えてる」って
覚えてるものは 撮らなくていいんだ
フィルムは残り何枚だろう
午後になっても まだ半分も使ってない
「もったいないから」じゃなくて
「まだ出会ってないから」って 君は言う
この日を いつか振り返るとき
何が残ってるだろう
潮の匂いとか 風の音とか
君がシャッターを切る 小さな音とか
帰りの電車で 君は眠った
膝の上に カメラを抱えたまま
俺はその寝顔を 撮りたいと思った
でもカメラは 君の膝の上
だから 目で撮った
まつげの影 少し開いた唇
窓からの光が移っていく
三十六枚には残らない 俺だけの一枚
三週間後 封筒が届いた
二十四枚の 君が見てた世界
錆びた手すり 水たまりの空
どれも 俺には見えてなかったもの
最後の一枚は 俺だった
堤防の上 海を見てる後ろ姿
撮られたことも 知らなかった
裏に 小さな字で
「忘れたくなかったから」
三十六枚のうちの 一枚に
俺がいた
君が残したいと思った景色の中に
俺がいた
それだけで
たぶん 一生分
Japanese indie folk / indie pop ballad. Male vocal, gentle and intimate. Tempo around 80 BPM. Instruments: acoustic guitar, soft piano, light drums, warm bass, subtle strings. Mood: quiet seaside memory, nostalgic, reflective. Atmosphere: late autumn sea, film photography, soft wind. Style: Japanese indie pop / acoustic ballad.
III 電球色3000KTRACK 10
名前のない植物が 窓際にいる
三ヶ月 ずっと「この子」って呼んでた
水をやるスポイト 百均の
それを大事そうに使う君が好き
商店街の帰り道 白菜を抱えて
「この子がいい」って選ぶ横顔
野菜にも植物にも「この子」って言う
たぶん 俺にだけ名前を使う
来週も来る? って聞いたよね
再来週も? って
うん って言った
うん しか言えなかった
鍋の湯気で 窓が曇る
君が指で何か書いた 見えなかった
見えなくていい たぶん
見えないくらいが ちょうどいい
膝がぶつかるテーブルで
ポン酢ひとつの「ありがとう」
なんでもないのに 響いてる
こんな夜を なんて呼べばいいんだろう
毛布を半分 分けてくれる
肩にもたれる重さを覚えた
髪がコートに引っかかって
直さないまま そのままでいる
辛いの好きだっけ って聞かれて
普通って答えた
でも君と食べたら美味しいと思うって
言ったら 三秒 黙った
そういうこと言うんだ って
怒ってるわけじゃなく
呆れてるわけでもなく
ただ ちょっと 驚いてた
テレビもつけない部屋で
遠くの踏切の音がする
自転車のベル 誰かの声
全部遠くて 全部やさしい
窓際の「この子」が小さく座ってる
名前がついた日の夜
るー って 何の意味かは聞かない
聞かないまま 隣にいる
コートの裾を つまむ指先
握らない 引っ張らない
ただ つまむだけ
それが君の 近づき方
俺は 手を伸ばすのが遅い人間で
君は 待てる人間で
その噛み合い方が
偶然にしては 出来すぎてる
鍋の湯気で 窓が曇る
曇った向こうに 商店街の灯り
オレンジ たぶん 2700K
君が教えてくれた数字
来週はキムチ鍋
再来週は まだ決めなくていい
決めないまま ここにいる
るーと 君と この部屋に
名前をつけるって
大事にするって決めること
三ヶ月待って
ようやく決めた名前の重さ
内緒 って言った
笑ってた
両方の口角が上がってた
その顔を 俺は知ってる
Japanese indie pop / acoustic love song. Male vocal, soft and intimate. Tempo around 85 BPM. Instruments: acoustic guitar, piano, soft bass, light drums, subtle strings. Mood: quiet winter evening, warm apartment atmosphere. Atmosphere: steam from hot pot, small room, gentle intimacy.
III 電球色3000KTRACK 11
鍋の火を止めてから
何も変わらなかった
ただ少し近くなった
それだけのことで
洗い物の音が止まると
部屋が違う顔をする
あなたの手がこの場所を
知りすぎている
言葉の前に指が動く
この部屋ではそういうことになっている
声を出してもいいと
気づいてしまった夜から
制御の仕方を
忘れていく
ここだけの文法
外では言えないまま
温度だけが正直だ
恥ずかしいのに
身体の方が先に答える
嫌じゃないのかと
もう聞かれなくなった
少しずつ
隠さなくなっている
それが怖いような
怖くないような
心臓のあたりに耳を当てる
速い、とあなたが言う前に
わかってる
毛布が重い
二人分の重さを
身体が覚えてしまう前に
目を閉じる
Japanese indie pop ballad. Male vocal, soft and intimate. Tempo around 75 BPM. Atmosphere: late night apartment, quiet intimacy, two people close together, soft emotional tension. Instruments: piano, clean electric guitar, soft bass, minimal drums, warm ambient pads. Mood: intimate, slow, warm, sensual but gentle.
III 電球色3000KTRACK 12
既読がついた 午前2時の画面の光
返事はなかった 部屋だけが静かに白んだ
怒ってるわけじゃない ただ
この静けさには 体温がない
「何かあった?」って 打ちかけてやめた
送ったところで 正しい言葉なんてどこにもない
だから待つ だから眠れない
暗い部屋で 最悪の物語を先に書く
全部話してくれれば
骨まで受け止める
全部話してくれれば
どこまでも行ける
ただ 聞こえない
聞こえてる? 僕の声
この夜の向こうに届いてる?
怒ってない 責めてない
ただ このまま 消えないでくれ
以前にもあった 気づいたら春が終わっていた
何が悪かったのか 今もわからないまま
それが一番怖い 理由のない終わりが
朝焼けみたいに 静かにやってくること
全部話してくれれば
どんな答えでもいい
全部話してくれれば
ここに立っていられる
ただ 聞こえない
聞こえてる? 僕の声
この夜の向こうに届いてる?
怒ってない 壊れてない
ただ このまま 消えないでくれ
沈黙には種類がある
君のはいつも 湖みたいだった
でも今夜のは違う 底が見えない
深さがわからなくて 息ができない
読めないまま 朝が来て
読めないまま また夜になる
泳ぎ方を知らない海で
ずっと腕だけ動かしてる
聞こえてる? 聞こえてたら
何も言わなくていいから
ここにいると 教えてくれ
それだけで もう少し 立っていられる
聞こえてる?
……聞こえてる?
Japanese indie pop ballad. Male vocal, emotional and intimate. Tempo around 80 BPM. Atmosphere: late night apartment, text message anxiety, quiet city night. Instruments: piano, clean electric guitar, soft bass, minimal drums, ambient synth pads. Mood: lonely, introspective, emotional tension.
III 電球色3000KTRACK 13
カーテン越しの光で 目が覚める
隣で眠ってる 寝癖のついた君
起こさないように ベッドを抜けて
キッチンに立つ 君のやり方で お湯を沸かす
温度はたぶん 少し違う
蒸らしも まだ足りてない
それでも 一口飲んで
何も言わずに 笑う君を見る
誓いの言葉は 似合わない
大きな約束も いらないけど
ひとつだけ
毎朝 君より少しだけ早く起きて
上手くなくても コーヒーを淹れたい
カーテンを開けて 光を入れて
「おはよう」って 言えたらいい
何でもない日を 何度も重ねて
特別じゃない時間を 選び続けて
季節が変わっても 変わらないものを
ふたりで 見つけていけたらいい
日曜の商店街で 君が立ち止まる
となりで 俺も立ち止まる
かぶを選ぶ 真剣な目
その目が好きだと ちゃんと言える
春は桜を見に行こう
夏は窓を開けて 風を入れよう
秋は少し早く帰ろう
冬は鍋を囲もう
決めすぎなくていい
そのときの気分でいい
同じ方向を見ていられたら
それだけで たぶん充分
永遠は 約束できない
でも 明日のことなら 約束できる
明日も その次も
毎朝 君の隣で目を覚まして
雨の日は 窓を少し開けて
晴れた日は カーテンの色を見て
今日も始まるね って笑えたらいい
何年先でも きっと同じ
特別じゃない朝を選びたい
今日みたいな 何でもない日を
ふたりで 大事にできたらいい
君が泣く日も あるだろう
俺は 上手く言えないかもしれない
でも 隣に座って
コーヒーをもう一杯 淹れることはできる
上手くなったね って
いつか言われたい
コーヒーじゃなくて
隣にいることを
毎朝 何も変わらない朝を
君と始められたら それでいい
灯りをつけなくても
カーテン越しの光が ふたりを照らす
毎朝 毎朝
飽きるくらい 同じ朝を
飽きるくらい 同じ言葉を
おはよう って
おはよう って
何でもない朝が
何よりも贅沢だと
君が 教えてくれた
Japanese indie folk, Male vocal, A morning that never happened, Key of C, BPM 68, A prayer disguised as a promise, Vocal: male, close mic, tender, unhurried, Imagining a future he may never have, Not sad — hopeful, Almost a lullaby, Guitar: acoustic fingerpicking only, Simple, repeating, The rhythm of a morning routine, Like sunlight through linen curtains, Cello: enters softly in verse 2, A single line beneath the voice, Not dramatic — breathing, Drums: none until chorus, Brush drums, soft, circular, Never louder than the guitar, Bridge: guitar and cello only, Voice almost whispering, Final chorus fuller but never loud, A wish becoming real for a moment, Production: morning light, Warm, clear, intimate, Sung in Japanese
十三曲、ぜんぶ灯った
「暖かい色が、好きなんです」